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March 02, 2007

東京マラソン回顧録

東京マラソンの余韻からようやく冷めつつあるけれど、もう一度あの日のことを振り返ってここに残しておこう。

とても寒い日曜日だった。
朝、目覚ましが鳴るよりも早く5時に目が覚めた。
窓の外は、雨。
天気については、前の日から100%雨だと思っていたので、しょうがないなという感じだった。
ウェアには防水スプレーもかけておいたし、途中で急に降られるよりも雨対策をしっかりできる方が気が楽だ。

新宿には7時半ごろに到着。
今回、一緒に走るハリーさん、九州から来たKちゃん、秋田から来たYさんと合流する。
雨はどんどんひどくなるので、整列はギリギリまで待つことにし、Hゾーンの目の前にあったワシントンホテルのロビーを待機所にした。
どうせスタートまで相当待たされるはずだし、無駄に雨に当たることもないと重い、9時ごろにHの最後尾に入ったのだが、結果的には身体も冷えず、大正解だった。

遠くにオーロラビジョンが見え、どうやら先頭はスタートを切ったようだ。
4人でわいわいと話しながら、隊列が動き出すのを待つ。
どこからか、紙吹雪が舞い落ちてきた。
あとで聞いたところ、ハート型の紙吹雪だったそうだ。
私のところには落ちてこなかったけど。

しばらくして、ようやく集団が動き出す。
いよいよスタートするんだと思うと、胸が高鳴る。
スタート地点は8分ほどで通過。思ったより早い。

新宿の大ガードの下をくぐり、左側の車線を走る。
本当にすごい人だ。
日曜の朝だというのに、歌舞伎町のあたりは沿道に立つ人も多かった。
そろそろ1kmを通過するだろうと思ったが、なかなか距離表示が見つからない。
2kmでやっと見つけるが、すごく小さな旗だったのでこの先、何度も見落とすことになってしまった。

曙橋のあたりで、ニコ3マークの黄色い幟を発見!
応援に来てくれた海実子さんたちに「おーい!」と手を振る。
みんな、大声で送り出してくれた。
次に会うのは38km地点の豊洲・・・また元気な笑顔を見せられるといいのだけど。

ラップは6分25~30秒で落ち着いてしまう。
本当は20秒ぐらいで走りたかったのだが、このペースが心地いいのでまぁいいか。
今日はとにかく、35kmまでは無理しないと決めていた。
歩かないこと、止まらないこと。
最後まで楽しむこと。
前半で潰れるような展開にだけはなりたくなかった。

四谷のあたりでいったん雨が弱まり、この辺でカッパを脱ぐ人が多かった。
私も一番上の100円カッパを脱いで、沿道のボランティアさんに渡す。
背中に貼っていたホカロンもバリバリと剥がして、ウエストバッグに貼り付けた。

飯田橋で電車が駅に止まっている。
電車の窓から乗客が手を振っているのが見え、ランナーも手を振り返していた。
私も手を振る。
こうやって、市民にアピールすることが大事かなと。

あっという間に10kmになり、1時間5分ほどで通過。
10kmレースの人たちが抜けて少しだけ混雑が緩和され、前後左右のスペースが広くなった。
品川に向かう途中で、また雨がひどくなる。
時々、水溜りに足を突っ込み、その度に足が冷たくて飛び上がりそう。
喉はまったく渇かなかったが、ペットボトルの水を受け取り、少しだけ飲んだ。
残った水がもったいなかったが、持って走るのも重いので残りはゴミ箱へ。。。
東京タワーが見えた。
雨に煙って、上の方は雲の中だ。
でも東京のど真ん中を走っているという実感が湧く。

品川を折り返し、日比谷に戻ってくるまでのハーフ前半は、ひたすら雨と風に耐えながら、やや下を向いて淡々と走った。
このあたりは、とにかく体力を消耗しないことだけを考えていたと思う。
沿道の声援にもあまり応える余裕がなかった。

そして、銀座に差し掛かった。
途端に、猛烈な声援が耳に入ってきた。

誰か、有名選手でも走っているんだろうか?と思う程の沿道の人・人・人。
見知らぬ人が私の目を見て、一生懸命声を張り上げて応援してくれている。
「すごいわねー」「がんばってー!」という声が耳に入ってくる。

想像以上の人から送られる熱心な声援に、「ありがとう」と応えると、思わず胸がいっぱいになり、涙がこみ上げてきた。
ホノルルでは一度も泣かなかったのに。
きっとこの雨と寒さの中、沿道の人たちもそれを堪えながら声援を送ってくれているんだということが何より嬉しかったのだと思う。

銀座の目抜き通りは本当に素晴らしかった。
応援が力になるというのは本当で、身体から熱いものがどんどん湧き上がるような感じで、疲れも寒さもまったく感じなかった。
高速道路の高架下には、私設応援団が待っているはずだった。

ふと後ろを見ると、ハリーさんがすぐ横にいた。
二人で手を振りながら、やんやの応援を受けて応援団の横を通過。
その時に、エナジーゼリーを1個受け取る。
これがそのあと、どれだけ役に立ったか知れない。

22km地点に差し掛かったところで、そろそろ給食が出てくるはず・・・と思った矢先、「ここは給水のみです。給食はすべて終わりました~!」という声が。

えっ、うそ! 給食終わっちゃったの?!

一瞬心拍数が上がったと思う。
でも、手にはエナジーゼリーを握り締めていた。
早くも空腹だったので、かじかむ手でキャップを開けてぎゅーっと喉に流し込む。
これで何とか空腹はしのげそうだけど、ここで給食がないんじゃこの先も期待できないなと思い、半分残してウエストバッグの中にしまっておいた。
右側の車線では、復路のランナーにパンらしきものを配っているのが見えた。
反対車線まで取りに行きたかったが、すごい人波でとても行けない。

今度は浅草に向かってひたすら走る。
風景がだんだん下町っぽく変わってくるのが面白い。
距離表示はあまり意識しないようにして、いつ雷門が見えてくるかを楽しみにして走った。

急に人が多くなったと思ったら、大きな赤いちょうちんが見えた。
何かと話題になっていた三角形の陸の孤島地帯と見てみると、やっぱりシャッターを閉じている店が多かった。
それでも人は溢れるほどに立っている。
せっかくのお祭りだから、来年はもっと浅草商店街が盛り上がってくれるといいな。
サンバなんかも踊ってくれたり。

でも今年はこれでいい。
これだけ人が集まっているのだから。
沿道の「がんばれー!」に何度も「ありがとう」と応えていると、いつの間にかまた雨が強くなってきた。
雨は止みそうで止まない。
手袋の上に薄いビニールの手袋を重ねていたが、もはや防水効果はなくなってしまった。
少しずつ、足の付け根が重くなってくる。
しかしラップは序盤より少し早くなって、6分15~20秒で推移している。

このまま、このまま・・・と思いながら、また銀座に戻ってきた。
再度、私設応援団の前を通り過ぎ、とっさにもう1個、差し出されたエナジーゼリーを受け取ってしまった。
どこのエイドでも給食は見当たらず、沿道の人たちがチョコレートや飴を差し出してくれると、それにランナーがわっと群がるという具合で、あっという間に食べ物が消えてなくなる様子を見て沿道の人もびっくりしているようだった。

私は1個のエナジーゼリーで何とか間に合いそうだったので、受け取ったゼリーを沿道の人に「誰かにあげて~!」と渡すと、「はい!」と大きな声が返ってきた。
給食がなくなったのは残念だったけど、こういう交流をもてたことは本当に心温まった。
まるで、非常事態下での助け合いみたいだ。
来年は、もっと多くの私設エイドが出現してくれるといい。

あまり距離を意識しないつもりでいたが、なんとか35km地点まで辿り着いた。
築地を過ぎて、まだ足はいくらか元気が残っている。
これから大きな坂が待っているけど、ほぼ予定通り、いや予想以上の出来。
この時点でやっと「行ける」と確信が持てたので、ギアをチェンジして坂を上った。
坂は嫌いではない。
上れば下りがあるから。
この先は2度試走しているし、もう残りは7km。

空がやっと明るくなり、少しだけ青空が見えてきた。
右腕にはめたナイキのラップカリキュレーターを改めてチェックすると、どうやら4時間30分ギリギリでのゴールになりそうだった。
最初は諦めていたけれど、こうなったらなんとか30分を切れないか。
そう思い、下りで少しペースを上げてみる。

豊洲に差し掛かり、また沿道の人が一気に増す。
黄色い幟、黄色い幟・・・と探しながら沿道すれすれを走っていると、見えた!
海実子さんさんたちのものすごい声援。
ありがとー! みんな、雨の中待っていてくれたんだね。みんなの分まで最後まで頑張るよ~。

少しペースを上げたせいなのか、次の坂で動悸が早くなり、身体全体がなんとなく重苦しくなってきた。
もしかすると、給水が足りていないのかもしれない。
トイレに行きたくないばっかりに、というより、本当に喉が渇かなかったので、あまり給水を取らずに走ってしまったのだが、そのツケが回ってきたようだ。
次の給水まで500mとあり、そこに辿り着くまでの500mが今回のレースで一番辛いところだった。
水を受け取り、ゴクゴクと飲み干す。
なんとなく生き返ったような気がする。

さぁ、ラスト2km!
頭の中では「いやだな、もう終わってしまう」ということが浮かんでは消えた。
フルマラソンが終わってしまうのが嫌だなんて、想像もしなかった。
もっと走っていたかった。
本当に終わってしまうのがもったいない。

最後のカーブを曲がって、ゴールに飛び込む。
一生懸命走ったが、30分切りはならなかった。
40秒ぐらい届かなかった。
でも、一度も止まらず、歩かず、走りきれたことが何より嬉しかった。

元気にゴールに飛び込んだものの、止まった瞬間に足は棒のようになり、その場で屈伸するのもイタタタ・・・という感じ。
メダルをかけてもらい、ポンチョを着せてもらい、チップを外してもらった。
なんだか至れり尽くせりで、恐縮してしまう。
あんなに食べたかったバナナが山のようにあり、あららと思うけど、誰も文句は言わない。
みんな、素晴らしいレースを走れた感動に浸っていたんだと思う。

私もその後、どこをどうやって帰ったのか覚えていないほど、ぽ~っと余韻に浸り続けていた。
ゆりかもめに乗ると、まだまだ沢山のランナーが走っているのが見えた。
みんな、頑張って。

一足先に休んでいる自分がなんだか申し訳なくて、もう一度沿道に出て応援してあげたかった。
そうだ、来年、もし抽選に漏れて走れなくても必ず応援をしに来よう。
そう思うとまた来年が楽しみで、今年走れなかった人たちがみんな優先的に走れるといいのに、と心から思った。

そういうことが素直に思えるほど、本当に素晴らしい大会だった。

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Comments

またあの日の思い出が蘇って、涙うるうるしてしまいました。みなみさんの完走記、つい自分が走っているような気持ちで読んでしまいました。読み終えた今、ちょっと心臓がドキドキしてます。素敵な完走記をありがとう。仲間の頑張りも自分のことのように誇らしく感じます。

この価値あるレースの経験がきっとこれから生きてくるよね。レースだけでなく、おそらく色んな局面で。本当に素晴らしい大会でした。

Posted by: 京丸 | March 02, 2007 at 21:57

私も。 感動してウルウルしながら読ませていただきました。
応援する私達は、大勢の中に自分の仲間を見つけるのに必死でしたが、走る方は、黄色の幟・黄色の小旗 と思って、それを目指して走っていらしたのですね。
黄色の旗が、皆をつないでくれたかと思うと、それも感慨深いです。

曙橋と豊洲以外のことは、全く知らない。
皆さんの感想記や話を聞いただけですが、長い長い38キロを走り続けて来たことには、本当に感激しますよ。

皆が作り上げた東京マラソンですね。

Posted by: 海実子 | March 02, 2007 at 23:38

>京丸さん

長文、読んでいただいてありがとう。
今思うと、第1回大会が雨でよかったんじゃないかなーって感じます。
あの雨のおかげで、いっそうみんなの心に残る大会になったよね。
ずぶぬれで走っているランナーを沿道で見ている人たちは、最初は驚き、そして心から応援してくれたような気がします。
でも来年はぜひ晴れて欲しいけど~(笑)!

>海実子さん

やっと書くことができてほっとしました。
走っている側から応援団を見つけるのは楽しかったし、そう難しくなかったのですが、その逆は大変だったと思います。
何しろ何万というランナーが流れていくのですから!
想像しただけで目が回りそうです。
しかもあの雨と寒さの中ですから、走っている側としては本当にありがたく、元気をもらえました。
でも海実子さんたちがとても楽しそうなので、一度応援する側にも回ってみたくなりましたよ~!

Posted by: みなみ | March 03, 2007 at 07:50

みなみさんこんにちは。先日は僕のところにもコメントありがとうございました。

みなさんの完走記をあちこちで読むたびに、僕もついついウルウルしています。タイムは違えど、確かに同じ場所を走ったんだという連帯感がありますよね。あんな冷たい雨はもう懲り懲り、と思うけど、来年も走れるなら、やっぱり冷たい雨でも走ってしまうかもしれません。でも応援もボランティアもやりたいですねー。

さあ、東京も終わって、次に向けてそろそろゆるりと動き出さなければ。

Posted by: まっち | March 03, 2007 at 11:26

泣けちゃった。やっぱり出たかったという気持ちもあるけど、あんな雨の中、がんばって走った市民ランナー全員に感謝したい。
本当に素敵な走り方でした、皆さん。
あんな最悪のコンディション、その中で走る、応援する、ボランティアする…、現場に行けなかったのが悔しいです。
来年は絶対走る側に回りたいけど、外れても応援に行きたいです。
東京マラソン、きっとつながるね。
市民ランナー、ボランティア、応援の人たちにありがとうと言いたいです。

Posted by: とだひ | March 03, 2007 at 13:38

素敵な完走記、ありがとうございました。涙がポロポロ出ちゃいます。もう2週間も経っているのにね。あの大会を一緒に走ったランナーさんは、もう他人とは思えなくて、同志のような戦友のような兄弟のような・・・勝手な親近感を抱いています。仰るとおり、雨もまた素敵な演出のひとつだったのかもしれませんね(寒かったけど)。
私も来年の東京マラソンをまた走れたらいいな、と思うけど、はずれたら30km地点くらいで「遅足ランナーさん」用の私設エイドをしようと思っています。来年も、きっと盛り上がった大会になりますよね!

Posted by: June | March 03, 2007 at 14:24

>まっちさん

お越しいただき、ありがとうございます。
あの大会を走ったランナーは少なからず、来年は何らかの形でお返しをしたいと思っているような気がします。
ランナーと沿道で応援してくれた方たち、そしてボランティアさんが一体となって作り上げた大会でしたね。
いつまでも余韻に浸っていたいのですが、そろそろ私も気持ちに区切りをつけて走り出したいと思ってます。

>とだひさん

今年は残念だったけど、とだひさんは来年組っていうことになっているような気がするよ~。
湘南国際も、こういういい大会になるといいね。
大会を走った人、応援した人、手伝った人、みんなの心に残る大会が本当にいい大会なんじゃないかな~とつくづく感じました。

>Juneさん

本当に同志ですよね。あの非常事態を生き抜いた!
沿道でお菓子を配ってくれた人たちも、多くは最初から用意していたわけではなく、たまたま差し出したらランナーたちが大喜びしたから、じゃまたコンビニで買って・・・というような成り行きだったような気がします。
来年は最初から用意してくれる人たちも増えるかもしれませんね!
遅足ランナーさんのための私設エイド、いいアイディアです。
私も実はいろいろと応援アイディアを練っています(^^ゞ。

Posted by: みなみ | March 03, 2007 at 16:48

はじめまして。JogNoteから辿って来ました。
素晴らしい完走記を読ませてもらいありがとうございます。
すごく感動しました。

Posted by: akira | March 03, 2007 at 21:09

>akiraさん

長文を読んでいただき、ありがとうございました。
akiraさんもjognoteに登録されているのですね。
私はここに登録してから、途端に距離が伸びて、友達もたくさんできました。
どこかの大会でお会いできるといいですね!

Posted by: みなみ | March 03, 2007 at 22:04

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